子供取り巻く「ケータイ」社会の現状は? -練馬区が情報リテラシー講演会

 子供を取り巻く有害情報の実態や、家庭・地域でできる取り組みを考えることを目的にした講演会「子供をとりまくネット、ケータイ利用の現状~有害情報に対する取り組み~」が11月30日、東京・練馬区内で開催された。講師の下田太一氏(NPO法人青少年メディア研究協会(ねちずん村)契約講師)は講演で、従来までのいわゆる「ケータイ安全教室」が教えるケータイの危険性とその対処法だけでなく、ケータイ社会の本質を突きながら親・教師の意識改革を訴える。

「安全・安心」という名の「確認社会」を招来
人格形成・コミュニケーション能力への影響も

 下田氏はまず、子供たちへのケータイ普及の背景について、携帯会社の販売戦略が巧妙に絡んでいることを指摘した。大人社会で飽和するケータイの販売を更に拡大するため、携帯会社は子供をターゲットに2006年から「キッズケータイ」を発売。児童向け雑誌等メディアも子供にケータイを持つよう促すキャンペーン企画を展開、普及に加担していった。


石神井公園区民交流センターで講演するNPO法人青少年メディア研究協会(ねちずん村)の下田太一氏。多くの参加者がメモを取りながら熱心に聴いていた。

 下田氏はケータイの「いつでも、どこでも、誰とでも、直接繋がる」特性こそが大きな問題を引き起こす、と明快に指摘する。今やケータイは、“携帯する電話”ではなく、パソコンによるインターネット・メールとも本質的に異なり、子供たちは“親にも知られないプライベートな最強の通信手段”を獲得したと言うのだ。こうして子供たちは、出会い系サイト、プロフ、なりすまし、ネットいじめ、という余りに危険な情報環境に無防備に放り込まれていく。

 また、発達段階にある子供がケータイを過度に使うと、コミュニケーション能力の低下を招くだけでなく、様々な発育上の問題を引き起こす可能性について言及した。例えば、食事中や深夜でもケータイに呼び出されて生活リズムを崩す、「いつでも繋がる」ゆえに孤独感への耐性を欠いていく、細かな計画を立てることができない――。

 大人社会と同じことが社会の初心者である子供達の間にも浸透し、人格形成に大きな影響を与えているのだ。この結果将来は、携帯電話の利便性に小さいころから頼るようになり、創意工夫や創造意欲など生きることを貪欲に求める力を欠く人間が更に増加するだろう、と予測した。

 同氏はまた、「安全・安心」の名を借りた様々なサービスが出現している、と親に注意を促す。これらは、子供の安全を本当に守るためのものではなく、「いつでも繋がるから」「どこにいるか確認できるから」と親が安心しているにすぎない。現代は「安全安心社会」「信頼関係に基いた社会」とは程遠く、常に場所や応答を確認しなければ気が済まない「確認社会」を招いている、と洞察した。

 同氏の講演は、具体例を交えながらテンポよく進み時間を感じさせない。私たちがどのような社会に向かっているのか、どう対処すべきか、を示唆してくれる。子供を持つ全ての親、教育関係者は必見の内容だ。

 同講演会は、練馬区教育委員会が重点事業として平成21年4月から全区立小・中学校において、特別活動の時間などを用いて第一部を児童(小学5年生)・生徒(中学2年生)、また第二部を全保護者を対象として行われる「情報モラル講習会」と連携した内容。今年5月から隔月で区内5地域で行われており、次回は2010年2月6日、練馬公民館で開かれる予定(講座は1月26日・2月2日)。

 

プロフィール
 下田太一 1978年生まれ。NPO法人青少年メディア研究協会職員として2008年度末まで講師を務める。今年度から同協会の契約講師となり、合同会社ロジカルキットを設立、代表を務める。

 

合同会社ロジカルキット
NPO法人青少年メディア研究協会(ねちずん村)

↑トップに戻る